「ああいう上司にはなりたくない」、物流現場でよく聞く言葉である。「現場を理解せずに指示だけを出す」、「会議では話すが、自分では決めない」、「責任を持たず、最後だけ評論する」。そうした姿に違和感を持つ人は多い。
その違和感は、本来であれば「反面教師」として組織に作用するはずである。「自分は違うマネジメントをする」、「自分なら先に動く」。そう考える人が増えることで、組織は少しずつ変わっていく。しかし実際には、同じような管理職が繰り返し生まれることも少なくない。
反面教師が作用しにくい組織には特徴があると考える。それは、「全員が評価者になっている組織」である。管理職は部下を評価し、中堅は若手を評価する。若手もまた上司を評価する。こうなる要因として、少なくとも2点考えられる。一つ目は、組織内の連結ピン(ブリッジ役)の不足である。本来、組織には上司と部下をつなぎ、経営や管理層の意図を現場へ伝え、現場の実態を上位層へ伝える役割が必要である。しかし、人員不足や業務の多忙によって、その役割が十分に果たされなくなっているケースは少なくない。互いの背景や意図が共有されないまま、それぞれが自分の立場から相手を評価する構図が生まれやすくなる。二つ目は、評価する立場に就いた人材が、必ずしも評価や育成について十分な訓練を受けていないことである。物流業界では、現場経験や勤続年数を評価されて管理職になるケースも多い。しかし、現場で成果を出す能力と、人を育成する能力は必ずしも同じではない。マネジメントに必要な教育や経験が不足したまま管理職になると、「育成」よりも「採点」が中心になりやすいと考える。
組織とは、本来、単に人を評価する場ではない。足りない部分を補い、支援し、人を育成することで、全体として機能を高めていくものだと考える。
「ああはなりたくない」という違和感は生まれても、それが「では自分はどう振る舞うべきか」という行動へ繋がりにくい。反面教師が機能しない組織とは、「他人を評価する力」ばかりが発達し、「組織を成立させる機能」が弱くなった組織なのかもしれない。
次回は、こうした「評価者化」が進む組織構造を踏まえながら、組織を成立させる機能について考えてみたい。
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「反面教師」が作用しない組織
組織/人事
2026年06月08日
