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フードロス ー小売の試み-

これまでに、「家庭」と「外食」で発生するフードロスについて取り上げたが、今回は、「小売」で発生するフードロスについて述べてみたい。

小売で発生するフードロスは主に、商品の破損・汚損や、賞味・消費期限切れにより発生している。日本の場合、商品の見栄えを重視する傾向にあり、内容品に問題が無くてもパッケージに傷のあるものは販売されないケースや、また、陳列棚の見栄えにも気を配り、商品を適時補充することで、期限の短い商品が売れ残りやすい状況が作り出されている。

解決には消費者の購買意識の変革が求められる問題で、短期的な解決は難しいと想定されるが、一つ有効と思われるのがダイナミックプライシングだ。これは、需要と供給のバランスに合わせて適宜価格を変動させる手法で、航空券や宿泊施設などの価格設定に使われており、スーパーでも、賞味・消費期限切れが迫る商品に対する値引きなどが同様の考え方である。環境省の調査であるが、普段期日を意識して商品選択している人でも、約25%の人が5-10円程度のインセンティブがあれば、期限の短い商品を購入するとの調査結果ある。また、2018年1月、スペインの首都、マドリードの小売店でダイナミックプライシングの実証実験を実施したところ、食料廃棄量が32.7%削減され、収益が6.3%増加したとの結果あり、ダイナミックプライシングは廃棄ロスだけでなく、店舗の収益改善にも有効な手段であることが伺える。

しかし、小売におけるダイナミックプライシング導入には、現状バーコードでは日付情報までデータ管理できず、同一商品で異なる価格設定するには、個々の商品への値札付替えが必要になるケースや、目視でしか期限切れ迫る商品を確認できないなど課題は多い。ただ、近年注目されているRFIDタグや、電子決済などでよく見かける2次元バーコードは、日付のデータ管理は可能であり、同一商品だが賞味・消費期限に応じた価格設定も可能かと考える。また、レジ機能の付いたカートの導入も進んでおり、例えば商品をスキャンした際に、期日短いがより安価な商品があることを表示するなど、商品ラベル・値札の付け替え不要にできる方法もあると考える。

様々な課題はあるものの、企業利益向上とフードロス削減の両方に寄与するダイナミックプライシングが、今後、小売業界にも普及するのか注目してみたい。

 

 

参考

平成21年度 食品廃棄物等の発生抑制対策推進調査報告書

民谷 成