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ヒューマノイドによる地方経済資産の再稼働

 先日、中国で「世界ロボット大会」が開催され、ヒューマノイド型ロボットが100メートル走で人類最速を上回るタイムで走り切り注目を集めた。同大会では、スポーツ以外にも仕事現場を想定した段ボール開閉やレジ業務など実用化競技も含まれ、生活に即したロボット開発の進歩も伺える。また、コスト面でも1体あたり約70万円の小型ロボット(サッカーロボ)も開発されており、実用化がますます現実味を帯びていると感じられる。ただ、一方で、人を上回る存在をいかにコントロールするのか、今後も議論が続くことだろう。
 人類はこれまでも、自らの身体能力を上回る存在と共存してきた歴史がある。例えば、馬は人より速く走り、重機は人間をはるかに超える力で土を掘り返す。ただ、人は、それら自らの身体能力を上回る存在に対して、「知恵」を持って道具を開発し、手綱やハンドルなどによって制御する術を確立してきた。
 ただ、近年は生成AIをはじめとする人工知能の進化により、初めて知的に勝る存在とも遭遇している。将棋の世界では「人vs人工知能」の対決が行われていたが、2010年代半ばからはAIがトップ棋士を上回る局面が生まれ、今では将棋AIに人間が通常の条件で勝つことは極めて難しいと言われるほどに進化している。では、人間が将棋をやらなくなったかというとそうではなく、棋士はAIを通じて新たな一手を発見し、観戦者も勝率表示によって対局をより深く楽しめるなど、人工知能が将棋の魅力向上に寄与していると言える。知的に上回る存在とも一定の共存方法を見つけ出した事例ではないだろうか。
 ただし、ヒューマノイドの登場は、これまでの人を超越する存在との付き合い方とは一段異なる意味を持つと考える。人工知能が主としてデジタル空間で「考える存在」だったのに対し、ヒューマノイドは、現実世界に物的に影響を与える「身体」を持つ。高度な人工知能と、汎用的に動く身体が結びつけば、人類は知的能力と身体能力の両方で自らを上回り得る存在と、より身近な現実世界で共存することになるだろう。これを脅威と感じることもあるだろうが、この恩恵を享受しやすいのが、人口減少に悩む地方ではないだろうか。
 地方には、土地、森林、水産資源、自然エネルギー、景観、歴史・文化といった豊かな「天然の経済資産」がある。ただ、現在はそれを活用する労働力が不足しており、産業が縮小化、 働き口が減ることでさらなる人口流出(労働力)を招く悪循環に陥っている。しかし、ここでヒューマノイドが状況を一変させる可能性がある。
一定の自律性を持つヒューマノイドが、耕作、収穫、選別、出荷、簡易な補修までを担えるようになれば、人がいないために経済価値を生めなかった土地や自然エネルギーを、生産資源として再稼働させることが可能になる。つまり、これまで労働力を確保するために、まずは「人をどの様に集めるか」という論点を解決しなければならなかったが、その解決を待たずして、地元にある資産を用いて「何を生産し、誰に売るか」に論点を変化させることができるのである。
 また、日本は人口減少が進む地方にも、道路、電力網、通信網、上下水道など、産業に必要なインフラが残存していることから、地方創生において好条件を備えていると考える。さらに、多くの地域は都市圏から数十キロ圏内にあり、全国・海外への物流網にも接続可能だ。
 労働力=人の時代では、地方創生には「人集め」が重要な論点で、そのために雇用創出や人が住みたくなる街づくりを課題として考える自治体が多かったのではないだろうか。しかし、これからのヒューマノイドが労働力を担う時代においては、人口増加が成功指標ではなく、天然の経済資産をヒューマノイドやロボットが活用する仕組み作りが、稼ぐ地方の鍵になるのではないだろうか。

民谷 成