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デジタル企業によるサプライチェーン垂直統合の時代

アパレル大手とアパレルを中心としたEC最大手が提携を発表した。オーダーメードのジャケットなどを製造販売するサービスを8月より開始、EC最大手が蓄積した約100万件の体形データと、アパレル大手の製造技術を組み合わせるとのことだ。コロナ禍でアパレル大手は損益が急激に悪化、業績回復の打ち手として、今回の提携にふみきったとみられている。一方、EC最大手の観点では、製造から販売までのサプライチェーンの垂直統合の時代到来を予感させる。
ECをはじめとしたデジタル企業は個客接点をもち、個客の好み・コメント、買わなかった品の仕様など、ビックデータを蓄積することができる。そのデータを提携する製造業者が活用して開発、製造に展開する。このような企業間取組みはこれまでもあったが、これからのデジタル企業は、さらに機能強化すると考える。例えば、国内の中小工場の非稼働時期を紹介するサイト企業と組んで、提携企業に多品種・小ロット・短納できる工場を紹介する、AIを活用して提携する製造業者がデザインした商品に適合する原材料メーカーを紹介するなど、サプライチェーンの構成機能をデジタル企業が基点となり、業務提携レベルにて垂直統合するのである。サプライチェーン垂直統合というよりは、個客起点のデマンドチェーン垂直統合である。一方、提携する製造業者の観点では、デジタル企業が企画・開発した商品を受託製造するようなOEM企業に変貌しないように、企画・開発能力を磨き続ける必要がある。

竹本 佳弘