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ラボラトリーオートメーションの台頭 AIを使う人、使われる人

ラボラトリーオートメーション(AIやロボットを使った研究の自動化)が加速してきた。製薬会社は実験に必要な作業の期間を従来の1カ月から1時間半に短縮し、素材メーカーは温度や混ぜる速度、乾燥など多様な条件をAIが自律的に組み合わせて実験する。新素材は開発に10年の期間を要する例もあるが、2~3カ月程度への短縮を目指すとのこと。コンサルファーム調査によると日本企業(売上高500億円以上)のうち全社的にAIを導入しているのは22年に13%。米企業(同5億ドル以上)26%とのことだ。

AI-ROIを考えるとR&D、ものづくりの領域だけではなく、フロントエンド(顧客接点の営業等)のAI活用が必須となる。要するに売れなければROI最大化にはならない。フロントエンドでのAI活用により、売り方を変え、且つ、営業リソースを他部門(AIを使う側)に再配置する。昨今のオープンAI等の活躍をみると、Singularityは思いのほか早まる可能性がある。Singularityへの準備としてAIを使う側のポジションと人材の定義が肝要である。

AIの分析、解析結果の確認作業、あるいは、AIに流し込むデータの収集作業、さらにはAIに質問し、指示通りに動く等の「AIに使われる人材」ではなく、AIの結果を活用して新規創出(事業、顧客、販路等)する「AIを使う人材」である。概念的ではあるが、有名経営者の言葉として、機械の創・活目的は人の幸福のためにある、そうでなければ、人が人間疎外(AIに使われる、あるいは人が不要となる)を生む、ということである。何のためにAIを活用するのか、AIを使う人材が強く求められている。

竹本 佳弘