前回のコラムでは、組織をシステムとして捉えることで個人の能力や責任だけに原因を求めるのではなく、役割や情報の流れ、仕組みそのものを見直すことに目を向けた。一方で、組織を動かすのは仕組みだけではなく、そこにいる「人」でもある。今回は、システム・マインドの先にある「人間力」について考えてみたい。
「人間力」という言葉を聞くと、コミュニケーション能力や協調性、リーダーシップなどを思い浮かべる人も多いだろう。しかし私は人間力を、もっとシンプルに「人をみる力」と捉えてみた。
例えば、業務改善のために新しい仕組みを提案したとする。「この方法に変えたほうが、業務効率が上がります」と説明しても、相手から「今のやり方で問題ない」、「そんなに簡単には変えられない」と反対されることがある。この際に、「この人は変化を嫌う人だ」、「改善意識が低い」と評価することは簡単である。しかし、相手が反対しているのは、提案そのものではないかもしれない。これまで自分が積み上げてきたやり方を否定されたように感じているのかもしれない、新しい業務を任されることに不安を感じているのかもしれない、仕組みが変わることで自分の仕事が増えると思っているのかもしれない、あるいは過去に似たような改善を経験し、うまくいかなかった記憶があるのかもしれない。そう考えると、同じ反対の言動でも、その背景にはさまざまな理由があることが分かる。重要なことは、相手の反応をそのまま評価するのではなく、「なぜ、この人はそう反応したのだろう」と一度立ち止まることではないだろうか。人をみるということは、相手の性格を見抜くことでも、相手の気持ちを言い当てることでもない。目の前に表れている言動の背景には何が隠れているのかを考え、相手の置かれている状況を想像することなのではないだろうか。
人は必ずしも合理的に行動するわけではない。正しい情報を伝えれば、必ず納得するわけでもなく、同じ言葉をかけても、その人の経験や価値観、置かれている状況によって、受け取り方は変わる。だからこそ、組織の中で人と関わるときには、「何を伝えるか」だけではなく、「相手にはどう見えているのか」を考える必要があるのではないだろうか。
では、この「人をみる力」をどのように磨けばよいか。私は、AIを活用できると考える。例えば、仕事中のやり取りに違和感を覚えたとき、「なぜこの人はこのような反応をしたのか」、「相手の立場から見ると、この状況はどう見えるのか」、「自分の伝え方に改善できる点はないか」とAIに問いかけてみる。もちろん、AIが相手の背景を正確に当てられるわけではない。しかし、自分一人では考えられなかった可能性を提示してもらうことで、「もしかすると、別の理由があるのかもしれない」と、自分の見識を広げることはできる。AIに答えを出してもらうのではなく、自分では見えていなかった「人の見方」を増やすためにAIを使うのである。
システム・マインドと、人をみる力。この二つの視点を持つことが、これからの組織には必要と考える。
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組織に必要な二つの視点
組織/人事
2026年10月07日
