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任せているから大丈夫?ー変わり始めた荷主の責任ー

26年4月1日より施行される「トラック新法(改正貨物自動車運送事業法等)」は、多重下請け構造の是正やドライバー処遇改善を目的とした法改正である。これまで運送会社側の問題とされてきた領域に、荷主の責任が明確に及び始めた点に本質がある。
この変化の中でまず押さえるべきは、「知らなかったでは済まされない」という点である。今後は、違法な輸送が発生した場合、発注した荷主側もその責任の一端を問われ得る。従って、取引先が適切な許可を有しているか、実際にどの事業者が運行しているのかといった基本的な確認は前提となる。これらは個別対応ではなく、取引開始時の標準プロセスとして組み込む必要がある。
また、実務上見落とされやすいのが多重下請け構造である。荷主から見えるのは元請のみであっても、その先で再委託が重なっているケースは多い。この構造はコストの不透明化や現場負荷の増大、さらには違法運行の温床となる。どこまで再委託が行われているのかを把握し、見えない状態を前提にしないことが重要になる。
さらに、運賃の捉え方も見直さなければならない。相場より低い価格には必ず前提があり、その多くは無理な運行や不透明な構造に依存している。価格の高低ではなく、「その条件がなぜ成立しているのか」を確認する視点が不可欠である。待機時間や付帯作業、リードタイムといった発注条件を見直すことが、結果としてリスク低減につながる。
これらを踏まえると重要となるのは、物流を外注業務として切り離して考えないことである。納期やロット、時間指定といった条件はすべて自社の意思決定であり、それが現場の負荷とコスト構造を形作っている。物流は任せるものではなく、自社で設計しているものである。その前提に立ち、「なぜその価格で運べているのか」に答えられる状態を作ることが求められる。この問いに答えられない場合、その物流は誰かの負担や曖昧な前提に依存している可能性が高い。
今回の法改正は、運送会社への規制強化ではなく、荷主を含めた物流全体の責任の再定義である。「任せているから分からない」は通用しない。自社の物流をどこまで理解し、設計できているかが重要であると考える。

上田 彩寿香