人口減少および労働力不足を補う施策として、外国人労働者の受け入れは今後ますます重要な政策課題となるだろう。物流業界においても、ドライバーを中心に慢性的な人手不足が懸念されており、政府の「総合物流施策大綱」では外国人ドライバーの活用方針が明記された。2024年には「特定技能制度」の対象職種が物流や自動車整備を含む16分野へ拡大されている。これを受けて、例えば、福山通運ではベトナム人ドライバー育成プロジェクトを立ち上げ、20歳前後のベトナム人を対象に大型免許取得を支援し、2026年には特定技能ドライバーを15名ほど採用する計画である。一方で、外国人労働者の増加に伴う犯罪や生活環境の悪化を懸念する声も根強い。こうした課題に対し、諸外国の成功例や日本における過去の受け入れ事例を参考にしてみたい。
カナダでは、労働市場の需要に応じた柔軟な移民・外国人労働者受け入れ政策を展開している。職種別選択制度(Category-based Selection)を通じて、医療、運輸、農業、技能職など需要の高い分野に人材を誘導する仕組みを導入。さらに、全国一律ではなく州・準州ごとに誘致・選抜を可能としており、地域経済の実情に応じた人材確保を推進している。また、受け入れと並行して、地域への統合にも力を入れおり、語学教育や就労支援、地域コミュニティ形成を支援する全国ネットワークを整備している点が特徴的である。
日本でも1980年代後半のバブル期、製造業・建設業における人手不足を背景に、日系人への在留資格緩和政策が実施され、ブラジルやペルーなど南米から多くの日系2・3世が来日した。愛知、静岡、群馬といった製造業地帯では、彼らを支援するための教会や子供向けの補習校が設立され、今ではその子供世代が地域社会に定着している。現在でも多文化共生センターの設置など、地域レベルでの共生を推進している点が注目される。
これらの事例から、特定の分野や地域の実情に応じた柔軟に受け入れを認可できる仕組みが重要であると考えられる。同時に、受け入れた外国人が日本社会に円滑に定着・同化できる環境づくりも不可欠である。法務省・警察庁の統計によれば、定住外国人の犯罪率は0.15%と日本人と同水準に留まる様だ。安定した生活基盤と日本人社会への融和が、外国人と日本人の共存の鍵を握るのではないだろうか。
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外国人労働者受け入れと定着
組織/人事
2025年11月11日
