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米国小売業のネット、リアル事業の戦略的分割の是非

米国小売業が会社分割の圧力にさらされている。高級老舗百貨店が2021年3月にネット事業を分離したのを皮切りに、他社も同様の検討を始めた。アクティビスト(物言う株主)から企業価値を上げるため、事業成長の見込めるネット事業を切り離すよう要求されているとのことだ。
前述の老舗百貨店から分離した新会社は2022年前半にも株式上場が見込まれており、評価額は分割発表時の20億ドル(約2270億円)から60億ドルに増加したとのこと。
一方、ネット事業とリアル事業の物流やマーケティング、販売などすべての機能は重複しており、分割はこれまで進めてきたネットとリアルを融合させる戦略を逆回転させる懸念もあるとのこと。
日本の小売業でネット事業とリアル事業を分割する動きはまだないが、前述の懸念の通り、会社分割により各社、同機能を整備することは非効率と捉えられる面はある。
しかしながら、ネット事業のスキルセット、マーケティング手法はリアル事業とは異なり、納品条件等の物流要件も異なるのが実態である。また、ネット事業はIT/AI及びアウトソーシングを最大活用した運営体制の超スリム化が必要なため、会社分割による機能非効率性を極少化することは可能と考える。
肝要なのは、ネット事業とリアル事業の共同企画によりO2Oの仕組みを維持することと、事業間でブランドを一部変えるなどで経営自由度向上に注力することと考える。

竹本 佳弘