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植物工場の変革

ビルなどの室内で生育環境を制御して、レタスなどの野菜を作る植物工場がコロナ禍で脚光を浴びている。袋詰め販売される点が衛生的で、雑菌が少なく日持ちし、洗う手間が省けるほか、大きさもそろい相性がいいようだ。生産効率化により割高だった販売価格も低下している。また、総菜向けカット野菜などの業務用も、CVSや外食店のサラダに使用され、共働きの拡大で需要が伸びる。まだまだ、割高ではあるが、天候に影響をうけず、品質と生産量が安定しているため、小売企業から引き合いが増えている状況である。
日本は植物工場の数が多く、当業界団体によれば386カ所ある。しかし設備が過剰で実験的な小規模施設が多く、4割は赤字経営とのことだ。これまで、低採算性と販路開拓の見込の甘さから撤退の報道が散見された。
しかし、近年では栽培の知見が蓄積され、大規模化も進んだ。水光熱費や人件費を削減する技術、栽培棚に設置するLED照明の廉価調達、混載便活用による物流費低減など、コスト削減施策により植物工場の収益性は向上している。さらにはIoTデータを収集、AIを活用し、さらなる低価格化に挑む企業もいるようだ。シンクタンク調査によると、現在、年55万トンのレタス需要に対し植物工場のシェアは3%程度。30年ごろにはシェア10%超に達する見通しだ。
低価格化に向けては、工場の立地をダイナミックに変革してはどうだろうか。チルド混載便を有する倉庫内に植物工場を設置するのである。夕方や早晩に小売企業から受注を受け、庫内ピッキングの様に庫内作業員が野菜を摘み取り、深夜に庫内工場から出荷、チルド混載便で翌日開店時には採れたて野菜が陳列されるのである。物流と工場の合体により、運送コスト削減と、受注・納品リードタイム短縮を実現するのである。

竹本 佳弘