TIC | 株式会社東京コンサルティング研究所

鍵を持ったアマゾン(1)

米アマゾン・ドット・コム(以下、アマゾン)が米国で新サービス「アマゾン・キー」をローンチした。当サービスを使用するためには、Amazon Key In-Home Kit(スマートキーとクラウドカメラ)を購入し、家の中に設置する必要がある。予めスマートフォンと当製品を連携させておくと、配達員が家に到着した際に、スマートフォン上に通知が入り、スマートロックを解除することができる。配達員の行動は、スマートロック解除の操作前から配達員退出までをクラウドカメラで録画が開始されるため、安心して配達員を家に入れ荷物を置いてもらうことができる。当サービスの狙いは、「ラストワンマイル問題(再配達問題)解消」と「他サービスへの展開」であることが推察される。現在、日本では宅配における不在訪問割合(訪問回数基準)が19.1%(H27年 国土交通省)であり、結果として全走行距離の内25%は再配達のために費やされていることになる。アマゾン・キーは、その再配達問題を解消し得る一策であり、従来の宅配ボックスと異なり、受取サイズの制限から解放されるため、スマートフォンさえ操作できれば確実に荷物の受取が可能になる。更に、アマゾンは「アマゾン・キー」をハウスクリーニングサービスなどの他サービスへ展開する予定である。配達同様、清掃員を家の中に入れ、不在の際にハウスクリーニングを済ませてもらうというサービスである。クラウドカメラによるセキュリティ対策は一見万全であるかのようだが、依然「プライバシー」のリスクを孕む。米CBSによると、「配達員がクラウドカメラにハッキングすることにより、あたかも配達員が退出したように見せることが可能である」というように、クラウドカメラの脆弱性が指摘されているのだ。依然セキュリティにおける懸念材料はあるが、ホームセキュリティ会社などすでにその領域においてノウハウがある企業との協業でそれらは克服し得ると推察する。そもそも、家の中を見られたくないという消費者に対しても、玄関から部屋の中が見えないようにする仕切りなどを設けるなどして、プライバシーを確保することが可能である。今後、アマゾンがプライバシー問題にいかに対処し、アマゾン・キーを普及・活用していくか注目したい。