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鉄道貨物会社の事業戦略

鉄道貨物が物流施設への投資を加速する。2022年に既存施設の3倍の床面積を持つ大型物流施設を東京貨物ターミナル駅に新設する(240億円の工事規模、賃貸床面積は約14万m2)。巣ごもり消費に対するEC需要を取り込む。鉄道貨物は輸送量当たりCO2排出量がトラックの11分の1とされる。脱炭素社会に対応した物流網を構築するとのことだ。
この隣接施設のテナントは、鉄道による安定輸送や立地の利点を生かし、新規顧客を開拓したいと話すも、鉄道輸送との連携は、まだ貨物の1割前後とのことだ。
新設拠点は品川で、立地は最高である。しかしながら、テナントとしては首都圏の配送拠点の位置づけであり、EC配送とは対極にある「急がない物流」の鉄道輸送との連携は困難と考える。
従前より鉄道のダイヤグラムは、乗客輸送を優先、深夜運行は騒音問題、という制約があり、鉄道貨物輸送はサービスの拡張性、柔軟性が高いとは言い難い。
このような中で、鉄道貨物会社としての戦略の方向性は、自社にて鉄道、通運の組み合わせを提供するポジショニングが必要と考える。親会社である鉄道会社との交渉により、貨物輸送便の追加の枠取りと、拠点での庫内・配送サービスをパッケージ販売するのである。当然、庫内・配送サービスは協業先に委託し、元受けとして、得意な運行管理機能を担うのである。

竹本 佳弘