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自動車業界、ビジネスエコシステム変革の影響

自動車部品メーカー大手が家電用の部品を増産する。高級家電などに使う小型ベアリングに今後4年間で約800億円を投じ、生産能力を倍増させる。脱炭素の流れを受けヘアリングを多用するガソリン車向けの需要減少を見越し、新たな収益源の確保を急ぐ。1/16付けのコラムに寄稿した通り、自動車のEV化がビジネスエコシステムを変革させ、部品業界に構造転換を迫っている。
ガソリン車は約3万点の部品を使用、EVになると必要な部品は半分程度にまで減る見通し。ベアリング部品も1台当たり3割程度減る。このため、当社は高級掃除機やエアコンの部品などに使う小型ベアリングを増産する。当ベアリングの需要は2030年度までに8割程度、増加すると予想しており、中国工場の設備を増強、他国での工場新設も検討する模様。
ビジネスエコシステムの変革に対する自動車部品メーカーの経営戦略が顕在化してきた。既存製品(の周辺製品)を新規市場に投入するという分かり易い戦略である。家電業界と自動車業界では生産計画の期間、精度、策定サイクルなどは異なり、オペレーション、組織も組み替える必要はあるが、生き残りをかけた戦略事例として、今後注目していきたい。
また、家電等の業界もAIやITネットワーク化のスピードが速い。その市場においてもビジネスエコシステムの変革が始まる。一方、本事例に示す他の市場への参入に追従できない自動車業界の下請け企業などは淘汰される可能性も出てくるのである。

竹本 佳弘