TIC | 株式会社東京コンサルティング研究所

サプライチェーンの複線化

コロナ禍において中国からの部品供給が滞り、日本の自動車業界等の調達に影響が出た。サプライチェーンの中国依存から複線化に変えるため、政府は補助金によりASEAN全体を対象に、生産分散を促進させる。補助金(20年度1次補正予算は東南アジア内生産拠点分散補助金に235億円計上)を来年度、大幅増額する見込みとのことだ。ジェトロによると、製造業の作業員コストはインドネシアやベトナムは中国(9,962ドル・年)の半分程度とのことだ。
従前より日本企業の製造・調達・SCM部門は、生産国での災害、国政、法・税制等のリスクに対峙しながら最適地生産を計画・実行してきた。これまでチャイナ・プラスワンということでサプライチェーンの複線化を検討してきたが、なかなか推進できなかったのは、なぜであろうか。
中国での生産は人件費高騰はあるが、一方、品質・生産性の高さ、日本までのリードタイムの短さ、配船の多様さ等、利便性は高い。サプライチェーンにおけるリードタイムの短さは、在庫の拠点数・量と、生産・供給計画策定サイクルの極小化に効き、市場(需要)対応力の強化となる。これが中国依存から抜け出せない状況と考える。
一方、この政府予算には国内生産回帰に対する補助金(同予算、2,000億超)もある。ここは国内生産回帰を加速させるのはどうだろうか。徹底的な自動化による国内生産で、市場への超短納期を実現するのである。

竹本 佳弘